先日、Xで非常に興味深い返信がきました。「利上げが行われたのに、なぜ円安が止まらないのか?」という疑問に対し、その構造的な矛盾を鋭く指摘する内容です。
「確かにその通りだ」と背筋が凍るような説得力があったので、共有します。
■ 「利上げ=円安」という衝撃のシナリオ
通常、金利を上げれば通貨は買われる(円高になる)はずです。しかし、その投稿では「今後は利上げをするほど、むしろ円安になる」と断言していました。
コピペすると以下の通りです。
(引用部分) 日銀当座預金付利が0.75%が約500兆円にかかり、日銀保有国債600兆円の利子が0.4%弱で赤字、その赤字額が日銀保有ETFの分配金とほぼ同額なったので今後は利上げするほど円安になる。昨日の円安はその転換点。 もう利下げも利上げも円安にしかならない。
少し金融用語が混ざっているので、これがどういう事態なのか、かみ砕いて解説します。
■ 日銀は今、「逆ザヤ」で大赤字になっている
一言でいうと、日銀は「収入よりも、支払う利息の方が圧倒的に多い」という状態に陥りつつあります。
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【収入】 日銀は「異次元緩和」の際に、大量の国債(約600兆円)を買い込みました。しかし、これらはゼロ金利時代に買ったものなので、そこから得られる利息収入はごくわずか(約0.4%弱)です。
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【支払い】 一方で、日銀は民間銀行から預かっているお金(当座預金・約500兆円)に対して、利息を支払わなければなりません。利上げによってこの金利が0.75%(政策金利)に上がると、支払額が急増します。
つまり、以下のような「爆損構造」が出来上がっているのです。
入ってくるお金(国債の利子) < 出ていくお金(銀行への支払い)
この赤字構造を海外の投資家(ヘッジファンドなど)に見透かされているため、「日銀の財務はボロボロだ=日本円の価値は下がる」と判断され、本質的な通貨安を招いているのです。
■ どっちに転んでも「円安」の詰み構造
この状況の恐ろしいところは、「進むも地獄、退くも地獄」になっている点です。
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利上げをすれば: 日銀の支払利息がさらに増え、赤字(爆損)が拡大する。財務悪化を嫌気されて「円安」。
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利下げをすれば: 日米の金利差が開いたままになり、通常通りのロジックで「円安」。
構造的に「どうあがいても円安」という、チェックメイトの状態に陥ってしまっている可能性があります。直後の片山さつき大臣の円安けん制発言が逆効果だったのも、市場がこの足元の弱さを見ているからでしょう。
■ その「ツケ」を払うのは誰か?
では、日銀が出した莫大な赤字は誰が埋めるのでしょうか? これまでは、日銀が国債で得た利益を政府に納める形でお金が回っていました。政府が日銀に支払い、日銀が最終的に政府に戻すたこ足の構造でした。
しかし、これが巨額の赤字になれば、最終的に穴埋めをするのは「政府」です。
自分の借金を自分で買い支えていたツケが、今まさに回ってきたのです。 そして、政府の穴埋め財源はどこから来るか?
答えはシンプルです。私たち国民の「税金」です。
私たちは今、「強烈なインフレ(通貨安)」と「将来的な増税負担」という形で、積極財政という名のバラマキ拡大と、異次元緩和の代償を支払わされています。そしてそのツケの代償は今がまだ初動の段階です。
■ 結論:唯一の解決策と、絶望的な現実
今、日本が円の信認を取り戻すには、「バラマキを即座にすべて廃止し、財政規律を守ること」以外に選択肢はありません。
具体的には、新規での純増する国債の発行を止め、借金の額を少しでも減らすこと。これはインフレ研究の第一人者である渡辺努氏なども指摘している通り、通貨の価値を守るための必須条件です。
しかし、それを実行するには大きな痛みが伴います。
これらは国民生活に「大出血」を強いるものです。現状、バラマキ政策を圧倒的に支持する多くの国民がこの痛みを理解し受け入れるとも思えませんし、それを実行できる覚悟を持った政治家がいるとも思えませんし、そもそも当選すらしません。
やるべきことは分かっているが、誰にも実行できない。 これが現実的な「チェックメイト」です。