1. 黒田日銀による「異次元緩和」の功罪
現状を理解するのに必要なのが今まで何が起こっていたか?ということです。黒田総裁の在任期間(2013年~2023年)、日銀は異次元の金融緩和策をとりました。
民間から無制限に国債(国の借金)を買い取り、その額は月間6兆円。まさしく異次元です。
もし、あなたが銀行の社長だったら? どうするか考えてみましょう。日銀が「市場価格より高く国債を買うぞ!」と言っています。あなたは手持ちの国債(1兆円分)を日銀に売却します。
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銀行 → 日銀: 国債を渡す
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日銀 → 銀行: 1兆円の現金をもらう
手元には1兆円の現金が入りました。さて、どう運用しますか? 国内は不景気で有力な貸出先がいません。
私なら以下のように考えると思います。
多くの金融機関が実際にこう動きました。
結果: 異次元緩和で起きたのは、「通貨安(円安)」と株高」でした。しかし、肝心の実体経済(内需)にはお金が回らず、円安による輸入物価の上昇だけが国民生活を直撃する結果となったのです。(悪性の物価高のインフレ)
2. 植田日銀の決断
この状態で就任したのが植田日銀です。10年間で、日銀が保有する国債は583兆円まで膨れ上がりました。国の借金の半分以上を日銀が持っているという異常事態です。 これ以上の円安とインフレ放置は危険と判断した植田日銀は、ついに「正常化」へ舵を切りました。
2024年7月の重大決定: 「月間6兆円買っていた国債を、段階的に3兆円まで減らす」
これまで日銀が買っていた月6兆円(年間約36兆円規模)」の買いが減少して3兆円になり、その差額の36兆円を民間の誰かが買わないといけないことを意味します。 その誰かとはゆうちょ銀行をはじめ各金融機関や生命保険です。
3. 高市政権の誕生と「需給の崩壊」
ここで事態を一変させたのが、高市早苗総理による「積極財政」の開始です。 成長投資のため、補正予算を含めた大規模な財政出動が決定されました。市場の試算では、年間の国債発行額は42兆円規模に達する見込みです。
ここで、「植田総裁の頭の中」を考えてみましょう。恐ろしい数字が見えてきます。
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日銀の撤退: 日銀が買うのをやめた穴埋め分(約36兆円)。
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政府の増発: 高市政権が新たに発行する分(約42兆円)。
「合計78兆円以上もの国債を、一体誰が買うんだ!?」
これが今、日本経済が直面している最大の危機です。
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日銀が買い支えれば? 「財政ファイナンス(借金を買う人がいないので日銀が助けた)」と見なされ、円の信用が崩壊。1ドル170円、180円へと「悪い円安」が加速します。
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日銀が買わなければ? 買い手不在で国債価格は下落(金利は急騰)。「債券ショック」が起き、地銀や企業の経営危機を招くおそれがあります。
黒田総裁の時は日銀が買い入れた大義名分「デフレ脱却」という理由がありました。しかし今回は違います。「借金の買い手がいないから日銀が買う」ことになれば、それは国家財政の行き詰まりを世界に露呈することになります。
4. 私が考える「片山財務大臣の秘策」とシナリオ
では、この局面をどう乗り切るのか。 私ならどうするか、ここ数週間ずっと考えていました。その仮説はこうです。
現在、大量の国債の買い手不在により金利がじわじわ上昇しています。これは過去の記事でも書いた通り、政府の利払いを雪だるま式に増やします。 しかし、日銀は金利上昇をある程度「放置」せざるを得ません。
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クラッシュ: ある地点(例えば長期金利2%超)でパニック売りが発生。「株安・債券安・円安」のトリプル安が襲う。
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介入フェーズ: 市場が壊れたこのタイミングで、政府・日銀が動く。なぜこのタイミングかというと名目上の大義名分がたつからです。
つまり、「一度クラッシュさせてからでないと、抜本的な対策(介入)の大義名分が立たない*のが現状ではないでしょうか。 片山大臣が円安には外貨準備で介入するとすでに発言しています。この「ショック療法」以外に道は残されていないのかもしれません。
しかし、片山さつき大臣が介入できる額にも限度額があります。政府の外貨準備高も介入に使える金額にも限界があります。その額おそらく20兆円。
ここも海外勢にはすでに見透かされています。
5. 結論
日銀にはもう、かつてのような「異次元緩和」というカードは切れません。 政策金利を上げれば、日銀自身が抱える国債の「逆ザヤ(赤字)」が一気に拡大するため、利上げもあと1~2回が限界でしょう。(前回の逆サヤのブログ説明を参照)
この日本の「手詰まり感」を海外勢は見透かしており、最近の先物市場での日本国債売り(ショート)に繋がっています。
ここで怖い話を一つ。最近海外勢の日本の国債保有比率が上昇しているのをご存じでしょうか?約23兆円。これは日本の国債が魅力的で買っているわけだは当然ありません。国債の先物市場で売り、現物の国債を買うというアービトラージの戦略をしているにすぎません。そして、国債は日本がほとんど保有しているから安心という恐竜時代の化石理論を信じている人がいますが、実際の国債を決める先物市場の売買の7割は海外勢のヘッジファウンドです。一日の売買高4兆円です。
なので、三流の経済アナリストが言っている内容は恐竜時代の内容です。
→是非ここで皆さんも事実関係を調べてください。このブログを鵜呑みにせずにご自身で。結構背筋が凍ります!主要な売買は以下の海外勢です。それは以下のような人
Winton Capital (イギリスのアルゴリズム取引の巨人)
AQR
RBC BlueBayAssetBridgewater Assosiates(世界最大のヘッジファンド)
背筋が凍りませんか???
高市政権と植田日銀は、この海外勢に見透かされた財政ファイナンス、すなわち「爆弾を抱えたままの綱渡り」をどう乗り切るのか。私たち国民も理解しておく必要があります。根源は、間違いなく債務が増えすぎた。いくら増えても問題ないというポピュリズムが引き起こした結果です。
SNSでは、短絡的な意見ばかりで判断している人がいますが、今は細い崖を歩いている状態というのが現状の日本の立ち位置です。